保身に走れ!

良く言えば鋭利な目、悪く言えば冷たい目、嶋の顔を見るだけで穂ノ香はドキドキしてしょうがなかった。


約一年間彼女が片思いをしていることに友達はまったく気づかず、

というより亜利沙もまた恋愛に忙しく、

塾の先生がアルバイトの女子大生とキスをしていてショックだったことを一年ほど引きずっており、

ちっとも穂ノ香の内面に注目していないようだった。


つまり、二人とも親友でありながら自分のことしか考えていなかったのである。


それを薄情でドライな奴と引くのは間違いで、

女の子はそんなもんであればあるほど実は普通であったりしないでもない。


損得感情ばかりで動いているから、

確かに去年仲良くしていたはずがクラス替えの度にサヨナラをかわし、

結局、小学生時代から今まで周防穂ノ香の親友欄は毎年一人だけだった。


そう、一過性の使い捨てでその場限りの女友達は、教室で自分が一人にならないために必要な武器のだけだった。

皆もそのような感じで、誰も腹を割って話しやしないし、絆がある訳でもなく、

それが彼女の通う中途半端に田舎な学校ではスタンダードな青春であった。

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