保身に走れ!
まず、あの悍ましい船場に、自分より穂ノ香の方が下だとコケにされている現状にイラついた。
そして、一般的にあの醜い亜莉紗より穂ノ香の方が下だと思われている事実にムカついた。
あの船場やあの亜莉紗には、顔も性格もスタイルもトータルで、
中学社会においてのステータス的な部分では、穂ノ香は勝っている自信があった。
けれども、「指揮者代わってよ。合唱コンクール去年さ、嶋と周防さん二人したんだから良いじゃない」と、
船場がいけしゃあしゃあと偉そうにしてくるし、
「穂ノ香が可哀相でしょう!」と、亜莉紗ごときがフォローしてくるし、
「……。」と、相変わらず嶋が無言を貫くし、
自主練に参加する抜群にヘボイ数名が喜々として聞き耳を立ててくるから、
今回ばかりは本当に本当に本当に穂ノ香は心外だった。
そう、チャラい奴やギャルい子などのキラキラ面子がサボって不在の今、
教室にいるメンバーは華がないろくでなしの幸薄軍団な面から、一番自分がマシだと考えていた穂ノ香にとって、
そんな下々のグループどもに見下されている感が死ぬ程許せなかったのである。
中学生、思春期、青春、この三点が揃えば、
どうやら皆自分が一番で、皆より自分がマトモだと主張したがる悪い癖が発症するらしい。