保身に走れ!


例えばの話。

食べかけのスコーンと二杯目のコーヒーが飾られたローテーブルの前にあるソファーへどっぷり座っているところを想像して。


『浮かれてる?』

『うん。どうしてるかなって』

『……ふうん。初恋とか? 妬くな』

『違う。初恋は小学校だから』


指でなぞる好きな人――遡って自分たちのことを思い出してみる。

あの時は知ることがなさそうな未来に焦っていた甘ったるいキスをくれる恋人の腕の中で、夢を見る。




そうして蘇るのは恐らく清潔で幼く脆い記憶のはずだ。

そんな始まりなら素晴らしい、大人の女性として合格だろう。

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