保身に走れ!
過疎のためどの学年も三組しかないが、
賑やかにすすむスケジュールに三年三組以外は青春をしている感が漂っており、プログラム通り楽しかった。
三年一組によるラインダンスは流行り歌に乗せてリズミカルに決め、
全員の振りが揃う完成度の高さに、下級生たちも拍手を自然と送る仕上がりだった。
凄いと穂ノ香が思わず本音を零すレベルで、素直に感動した。
しかし、列の後ろらに集う三組の大御所たち目線だと、
「ダンス見せられたって暇なんすけど」
「おもんな。くだんね。失せろ」
といった感じで、和やかな空気を悪く染めるブーイングを起こすか、
「つか右から三番目ん奴、張り切り過ぎてキショくね?」
「センター右の可愛い子な、あいつ顔だけ。俺んツレがナンパしてやった」
といった風に、ライブ公開で舞台に上がった人をイジるかで、
文化祭という青春区域を汚そうとばかりしていた。
中学生は自分より強いと認識した相手には、自然と従う性質があり、
案の定、残りの三組の連中たちも、野次に合わせてクスクス笑い始める。
『あんたらのせいでこっちまでつまんなくなるじゃん』
言えない本音を飲み込み、穂ノ香は息を潜めた。
なぜなら、真面目とか正統派とか正論とか真剣とか、一見誇らしい類いに性格が当て嵌まるキャラクターこそが、
頭のかたい場の読めない中学生として、陰気に位置付けられているせいだ。