保身に走れ!

「周防のせいで客とか完全トイレタイムだろ」

「……合唱ってさ。ちょっと。……ほんと周防さんって空気読めないとこあるよね」

「ゴーストんせいでウチらが恥ずかしいし」

「そーんなだから友達少ないんじゃね?!」


直接文句を言われないが、聞こえるようなヤジに穂ノ香は居心地が悪く目線を落とした。

今日は教育に熱心というか過保護な両親が娘の晴れ姿を見に来ているため、余計気分が冴えなくなる。

文化祭なんかなくなればいいのにと思った。


「あーあ。穂ノ香が真面目に先生にメールなんかするからだよー?」と、親友の割に亜莉紗は慰めるどころか、余裕で批判してきた。

もともと彼女はそういう性格で、教室の世論に合わせ唇を動かす節があり、船場を馬鹿にしたり嶋をイジったり、

デキ婚を見下したり陰で穂ノ香をゴーストと呼んだりするから、

穂ノ香は内心親友を好きではなかった。

ただ、三年生のクラス替えでグループに入れず単品だった二人は、なんとなくつるんでいただけなのだ。


  ……なによ、
  あの時みんなが意見出せば良かったんじゃんか

  後から言われたって知らないよ
  ウザイのそっちじゃん


クラスメートは嶋以外の皆が自由気ままなクレーマーになる。

中学生活最後の文化祭がこのままではいけないし、殻を破るには最大の好機だ。

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