【5】隣人の森
 その夜、口元まで伸びていた蔦が、口の中まで食い込んできた。私は必死に歯で侵入を遮っていたのだが、蔦から分泌された甘い汁に、空腹を満たされた。

 暫くはその恩恵を享受していたのだが、その分泌液のせいで、私の全ての歯が、脆くも歯茎から抜け落ちた。

 やがて、蔦は喉元を通り、私の体の深淵へ侵入していった。
 私に為す術などなかった。
< 8 / 21 >

この作品をシェア

pagetop