Rain 2
『とにかくこっち戻っといで。風邪ひいたら大変やろ?そんなに濡れて…』



千春さんは次の瞬間いつもの千春さんに戻っていた。



あたしは少し戸惑いながらも、言われたとおりフェンスをよじ登って戻った。





『もぉ…心配させんといてよ…』



あたしはびっくりした。


千春さんはそう言って強くあたしを抱きしめてくれたから。





でも嬉しかった…


ボロボロになった心を、少しだけ助けてもらえた気がした。





『あた…し…全部なくなってしまった…あたしにはもう何もな…い』



そう言ったあたしを千春さんは優しく包んでくれた。



抱きしめられることってこんなにあったかいもんやったっけ…



あたしは一瞬、お母さんを思い出した。





お母さんはよくあたしのこと抱きしめてくれてたな…




『そんなことないよ。知香ちゃんまだまだ若いやんか…』



千春さんはそう言ってあたしの肩を抱きながら近くに屋根みたいなものが付いていた場所にあたしを座らせた。



屋上にはまだ雨が強く降っていた。
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