Rain 2
『あ…はい』


聖夜はキョトンとした顔でそう言うと、読んでいた本をぱたっと閉じた。



『あっ、その本…好きですよね。あたしも読まされたから覚えてます』


『え?あぁ。この人の書く小説かなり好きなんすよ。あすなろ白書とかはベタやけど(笑)でもこの本って対談形式っぽいし読んでてあぁ!ってなるからいいですよね』



聖夜が手にしていた本は、柴門ふみが別の小説家?と組んで出版した
《さよならにもルールがある》という本だった。





『柴門ふみ…好きやもんね。あたしも聖夜がきっかけで好きになったもん』


あたしがふとそう言うと、聖夜は少し驚いた顔をした。





『あたしが聖夜とか言ったからびっくりした?』


『あ、うん…』


『でもあたしはずっとそう呼んでてん』


『あの…なに言ってるんすか?ちょっとよく分からないんですけど』



聖夜は少し戸惑っていた。


そりゃあそうだろう。


考えてみてよ。



知り合ったばかりの自分の恋人の友達と思ってたやつが勝手に名前を呼び捨てにしてきた上に、前から呼んでたとか訳の分からないこと言われたら誰だってびっくりする…。
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