Rain 2
『あの子の気が立つようなこと言わんといてね』



はぁ?

とにかくただそう思った。

入ってきたのはあのおばさんだった。


普通の神経ならそんなこと言わないでしょ。

あたしはあんたの娘に骨髄を移植する相手やで?




『ほんならあんたもあたしの気が立つようなこと言わんといてな。いつ気が変わるか分からんで?移植せんかもしれんから』


ガラスの向こうにいる香織には聞こえてないし、あたしはおばさんに嫌みったらしくそう言った。


『…』


おばさんは何も言い返してこなかった。


『ちょっとお前は出て行ってくれ。三人で話がしたいんや』


お父さんがおばさんにそう言うと、おばさんはしかめっ面で病室を出ていった。





『知香…すまんな…』


お父さんがあたしに謝ってきた。


『お父さんが謝ることちゃうし。別にたいして気にしてないから。あたしあの人は頭イってると思うようにしてるし』


『そうか…。じゃあ入ろうか』


お父さんはそう言ってあたしより先に無菌室に入っていく。



あたしは後を追うように、中へと入った。
< 49 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop