Rain 2
『ありが…とう』


香織はあたしに向かってそう言いながら泣いていた。


何を思って泣いたのかは、あたしには分からない。


でも少なからず、あたしに対してなんらかの気持ちがあったのだろう。




同じ父親をもち、
同じ男を好きになったあたしに…




『泣くな泣くな。泣くんは手術が終わってからや。お父さんが絶対にお前を助けるから。なっ?』



目の前にいる二人の親子…

あたしからしてみればとんだ茶番だった。



自分の存在が何故かちっぽけに感じた。



お父さん?
あたしに求めるのは骨髄だけ?

そうじゃないやんな…?





『手術は明日の正午からやから。香織も知香もあんまり心配せんと夜はゆっくり寝ていつもどおりでいいからな』


『うん…』
『はい…』

あたし達はそう返事をしてとりあえず顔合わせは終わった。



『じゃああたし戻るわ』


『そうか。お父さんはもう少しここにおるから先に戻っててくれ。知香…色々ありがとうな』



あたしは軽くうなずいて無菌室を出ると、帽子や白衣を脱いですぐに病室から出ていった。
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