神様の靴音
母親も帰り、そわそわ待った夕方の6時少し前。
意を決したように立ち上がり、ポンチョを羽織る。
シュッと香水を一吹きし、もう一度鏡を見た。
「…よしっ!」
鏡の中の自分に頷き、真帆は病室を出た。
娯楽室が近付くにつれ、真帆の鼓動は高鳴っていく。
「あぁ‥どうしよう‥なんて声掛けたらいいんだろ‥」
やっぱり無理だ、真帆はくるりと体を反転させた。
「うわっ!」
ドン!
「わっ‥!ごめんなさい!」
勢い良く反転したせいで、ぶつかってしまったようだ。
「いいよ、そっちこそ大丈夫?」
「あ、はい‥」
見上げた彼の身長は高く、ニカッと笑う笑顔は、あどけない少年のようだった。