未完成なアタシと君と。
>>>午後3時
「あの…」
「…」
アタシは、自分の名前を知らない。
その時点で未完成。
嫌だ
嫌だ
嫌だ。
というわけで、アタシは今、アタシを作った人の息子の元に来た。
アタシの名前を知ってると聞いて。
だが、この男。
アタシが来ても、何もしゃべらないどころか、動きもしない。
死んでいるのか?
「あのっ…」
「名前でしょ?」
!……しゃべった。
一人関心して、唖然としていると、男が椅子から立ち上がり振り向いた。
きれいな、顔立ちと、きれいな瞳、そしてミルクティー色の髪の毛。
でもなぜかイレギュラーに感じるのは、
目の色が灰紫(アッシュモーヴ)だからだろうか?
「…君の名前は、ないよ」
「…え…っと、アタシは、ここで名前を聞けると聞いたのですが」
「俺“アタシ”って嫌いなんだ」
「何をおっしゃっているのです?」
「君には“私”が似合う」
“わ”と“あ”の違いが嫌らしい。
彼は口元だけ笑って、アタシを見た。
「言ってごらん、未完成人間さん」