未完成なアタシと君と。
「ふ、気に入ったみたいだね」
「!」
思わずがばっと起き上がる。
「いいよ、まだ朝の6時だし、少し寝たらいい」
「いえ、朝ご飯、というものを作らなくてはなりません」
「え?いや、8時とかでもいいじゃない?」
「…あなた様は本日学校があるのでは?」
そう、彼は高校生。
高校3年生だった。
私は、郁であれば高校1年生の予定。
だが今は…私は、誰?
「ああ!そうだ、俺の名前を教えてなかった」
「!」
教えてくれるのか。
「試す、って書いて試(こころ)、だよ」
「試、さま」
「………何?その様、ふふ、俺は君の主?」
「では、試様は初めて名前を知った人を呼び捨てになさりますか?」
「うーん、名字かなあ、様はつけないかも」
博士の記憶は多すぎて、まだ整理ができていない。
そうなのだろうか…様とつけるのは、よくない…?
「あ、そうだ、君の名前」
「あ…」
その薄い唇から吐き出される言葉は、
「 小宵(こよい) 」
とても懐かしい、響きがした。