大嫌いです、たぶん本気で


「帰りますよ?」


「だめだめ!はい、座ってー」


「……どこに?」


先輩の部屋は驚く程すっきりしている。

ベッドに本棚、机……終了。

本棚には沢山本が並べられているのに。

ソファーなんて物は見当たらないんですが。


「ベッドじゃ駄目?」


「……駄目ってことは無いですけど」


ここで断れば、まるで私が意識してるみたいで、何とも釈然としない。


そんな変なプライドに促されて、私は黒いカバーの掛かったベッドに浅く腰かけた。


「……って、何ニヤニヤしてるんですか」


「いや、桜が俺の部屋に居るなんてさー」


「……キモい」


「キモいって……」


隣にいる先輩は、おかしいな、イケメンな筈なのに。

どうにもトキメかない。


きっと女子力が高い子ならば一瞬にして惚れるのだろうけど。

私にはそういうスキルが欠けている気がしてならない。


「…いやそんなスキルは要らないけども」


「どうしたの桜」


……口に出してたのか。




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