ボクの涙がキミの翼になる。
〜第一章・遠き日の始点〜
高校三年生・春
「ショウ!早く着替えなさい!マミちゃん待ってるよ!」
母の声だ。いつもながら頭に響くような五月蝿い声だ。
マミとは中学校から友達付き合いをしている。というか、向こうからみたら使い走りのようなものか…腹が減ったと言われれば食糧を調達し、暇だと言われれば、いつ、何をしていようと飛んで行く。何故かと言われると困るのだが、断れない空気を作るのが上手い。そんな奴だ。
しかし今日はそんな彼女の家で軽い同窓会のような集まりをやる。
「もう行くよ!早く乗りな!」
今日は母の車で友達と乗り合わせて行く事になった。そのまま数分車を走らせると友達のゲンキが家の前で待っていた。
「よぉ、ゲンキ。元気してたか?」
いつもの調子でからかうと、眉間にシワを寄せ、彼はこう言った。
「殴るぞ」
彼とは長い付き合いで、顔を合わせれば憎まれ口を浴びせ合っている。
…しかし今日はいい天気だ。道を囲うように生える草木も踊っているように見える。そんな俺の表情を感じ取ってか、ゲンキが口を開く。
「なぁ、覚えてるか?俺ら二人の中にマミが入って来た時の事」
覚えてる。彼が覚えている以上に、鮮明に覚えている………………。
< 1 / 7 >

この作品をシェア

pagetop