君が好き


【日向】



退院する前の5日前




俺の病室に瞳が来た




ちょうどその時は親も光も来ていない時だった




「瞳…」



下を向いたまま動こうとしない




俺は何かされるのかと思って身構えていた



けどそんなこととは反対に、いきなり頭を下げてきたのである



「えっ!?」



と驚いている暇もなく、瞳は



「ごめんなさい!
今回は私のせいでケガをさせてしまって…
本当にごめんなさい!」



今までに見たこともない姿だった



瞳が人に頭を下げて謝るなんて…



瞳は決して自分からは謝ろうとしない、強気で自己中な奴だった



それがどうしたことか…



「私、今まで人に迷惑をかけてきたとは知らなかったの…」



えぇ!?



「誰もそんなこと言ってくれないし、怒らないし…」


なるほど、こいつは誰にも怒られないような甘い環境で育ってきたというわけか…



俺も迷惑だとか言わず、態度だけあからさまに嫌がっているように見せてたからな…



だからこっちが機嫌悪いということもこいつ…瞳にはわからなかったわけか…




「でもね、この前初めて私を本気で叱ってくれた人がいたのよ…」



「へー…」



何ともまぁ、赤い顔をして、まるで恋に落ちた乙女のような顔をしていた



「まぁ、言いたかったのはこれだけよ
あとあの子もごめんねって言っといて」



「あの子って…?」



「日向の大切な人」



あぁ、光のことか…



「私、ちゃんと変わるから…
じゃ、もう会うことはないかもしれないけど、さようなら」



そう言って病室を出ていこうとする瞳を俺は呼び止め最後に聞いた



「その叱ってくれた人って…?」



瞳はクスッと笑って人差し指を口元にもっていき



「内緒♪」



と笑って出ていった





その相手が誰かなんて別にどうでもいいけど、瞳に眼をつけられるとはついてないな…



と思った








ま、今の瞳なら大丈夫だろう



本当に笑った顔なんて初めて見たし…





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