君が好き
ってことは、今日は私と尋だけしか家にいないんだ…
何だか寂しいな…
玄関で上を向いてしみじみ浸っていると、ガチャッとドアが開く音がした
「ただいま〜
ってあれ、ねぇちゃん何してんの?」
振り返ると、そこにいたのは弟の尋だった
尋は中学2年で私と2つ違い、野球部に入っているため、少し断髪
「何って…
今帰って来たとこ」
「そうなんだ
まぁそんなことはいいからさ、上がるなら早く上がってよ」
私は尋に言われ、ふと、まだ玄関に突っ立ったままだったことを思い出した
「あ、ごめん!」
急いで靴を脱ごうとした時、もう靴をはいてることだし、このままコンビニでも行こう
と思って、動きを止めた
なかなか家に上がらない私に尋は待ちきれなくなって、横を通り先に上がってしまった
「母さーん
…母さん?」
リビングの扉を開けながら呼ぶ
けどいつもの返事がないことに、尋は少し戸惑っていた
「あ、お母さんなら急な用事で12時まで帰って来ないってー」
お母さんの姿を探し始める尋に聞こえるぐらいの声を出して言う
「それ早く言ってよ…」
シラケたような顔をして納得したのか、カバンを床に置いてドカッとソファーに座った
「尋ー、今から夜ご飯買いに行くんだけど、何がいいー?」
「…麻婆豆腐!」
「そんなのコンビニにあるわけないでしょ!」
「コンビニかよ!
じゃぁ、普通の弁当でいいよー」
「分かった!」
リビングにいる尋の姿は見えないまま、話だけを進めていった
「いってきまーす」
「いってらっしゃーい」