君が好き
もう涙で顔もわからない
けど、この声は北条くんだ
と分かった
「北…条くん…?」
「あぁ…」
今の私の顔はすごくグシャグシャで、人前には見せられないものだろう
けど、その時の私はそんなことを考える暇もなくただ北条くんの服にしがみついてわんわん泣いた
いきなり泣き出すもんだから、すごくビックリしてどうすればいいのか迷った北条くんは、泣いている私と一緒に歩きながら家まで送ってくれた
何度も慰めるように頭を撫でながら
「何があったのさ?」
家に着いた頃には、私の涙は枯れていて止まっていた
「……家の中で話していい?」
「あ…うん…」
そう言って、私は玄関の扉を開け
「ただいまー」
と元気なく言う
けど、家で留守番していたはずの尋の「おかえり〜」の声がなかった
聞こえなかったのかな?
と思い、もう少し大きな声で言ってみる
けど返事はなかった
…何で?
玄関で待っている北条くんに
「ちょっと待ってて」
と言ってリビングに向かう
扉を開けると、誰もいなく、尋の姿は見えなかった
「尋〜?」
周りをキョロキョロとしながら呼ぶ
けど返ってくるのはシーンとした空間だけだった
「どっか行っちゃったのかな?」
首をかしげながら、テーブルに目を向けると、1枚の白い紙切れが置いてあった
『わりー姉ちゃん、俺ちょっと友達ん家行ってくるわ。
晩飯はこっちで食うから、姉ちゃん食べてて。
俺の分は、朝食べるからさ。
10時ぐらいには帰ってくるから。 尋 』
………え、尋も友達の家行っちゃったの?
じゃぁ私1人じゃん……
「おーい、野崎ー?」
玄関から私を呼ぶ北条くん
あ、待たせてるんだった!
…奈緒も花も家結構遠いいから遊びにも行けないし、来てももらえない…
日向くんを呼ぼうにも、今は会いたくないし…
北条くんに、尋が帰ってくるまでいてもらおうかな…
けど、それも迷惑だよね
置き手紙の紙をクシャッと軽く握り潰しながら、台所のテーブルに置く
まぁ、ちょっとの時間なんだし、1人でも大丈夫でしょ!
無理やりに、寂しい思いをポジティブに変えた
「あっと、早く北条くん入れてあげなきゃ…」