君が好き

「お茶とコーヒー、どれにする?」



「あ、じゃぁコーヒーで…」



「ブラック?」



「うん…」



ソファに座って待っている北条くんに、私はコーヒーを2つカップに入れて持ち運んだ



「どうぞ」



「…ありがとう」



カップを北条くんの前に置いて、私も同じソファに腰かける



少しの距離を置いて





…さて、何から話したらいいのかな?



座ったはいいものの、考えがまとまらない



二人の間に静かな沈黙が流れる…



「あの…さ…」



沈黙を破ったのは北条くんだった



「…何で泣いてたのって聞くのもあれなんだけど…
実は俺さ、あの光景見てたんだよ…」



「…あの光景?」



「日向と女の子が話してて、女の子が日向に抱きついたところ…」



「……」



言葉が出てこなかった



あの場面、北条くんも見てたんだ…



じゃぁ私が泣いた理由も北条くんには分かってるんだね



「そっか、北条くんも見てたんだ…」



カップに両手をつけて、斜め下を向き、力なく笑う



「日向くんと話がしたくてもすぐ帰っちゃうし…

それに、さすがにあんな場面2回も見せられたら、疑っちゃいそう…」



カップを持つ手の上にポタリと、滴が落ちる



「…どうしよう、北条くん…」



声が微かに震える



「私、日向くん信じたいのに信じられなくなってる自分がいるの…

何か理由があるんだって思ってても、本当はもう私のことはいらないんじゃないかって…」



ポタポタと頬をつたって流れてくる滴は口に入ると、しょっぱかった



「考えれば考えるほど、悪い方にばっか考えちゃう…
ハハハ、私めんどくさいよね…?
日向くんのことばっか気にして…」



小さく笑いながら言うと



「何が悪いんだよ?」



「……」



怒っているかのような低い声



北条くんは私の方を向いて、真剣な顔をして言った



「好きなやつのことを気にして何が悪いんだよ!

野崎……光は!」



突然名字から名前で呼ばれる



そして、ガバッと引き寄せられ、抱きしめられた



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