運命
タッタッタッ

「大丈夫ですか?」


「しっかりして下さい。」

走りながら看護師達は空に話かける。

しかし空は返事をしない。空の顔はすでに血の気が失せていた。


「ねぇ、そらは、空は大丈夫ですよね?」

たんかに乗せられている空を見て、様々な不安により青くなった顔をした光が医者に詰め寄る。



「とにかく貴方は外で待機を。」


バン


緊急治療室のドアが音を立てて開き空は治療室内に運ばれていった。


「手術中」という文字が光っていた。

ギュッ


ただ祈るように両手を握りしめていた。


ハァハァハァ

「ひっ ひかり !!
兄さんは?兄さんは?」
両手を膝につき荒く呼吸をしている。

きっと病院から電話があったのだろう。

彼らの両親は旅行中で家は留守だった、だから慌てて飛んでこれたのは月だけのようだ…。



下を向いた顔を上げて、一度月の顔をみた。
真っ赤に腫れた目元が、月の目に映った。


「いま…… 手術中。」

再び下を向いた光は、悔しそうに強く唇を噛み締めていた。


二人は、ただ祈ることしかできなかった。
< 13 / 30 >

この作品をシェア

pagetop