運命
手術中のランプが消えたのは、それから1時間後であった。
ウィーン
「…………」
俯きながら医者は、治療室からでてきた。
「先生!? 空は?
空は大丈夫ですよね?」
重たい沈黙が流れた。
医師俯いていた顔をあげた。
そして重く閉ざしていた口を開いた。
そして
「ーー残念ですが………………………。」
紡ぎだされた一言は、光に重くのしかかった。
ダン
立っている気力もなく、崩れるように膝をつく。
「ーー我々ーも手をつくしたのーですーが」
ザーッ
壊れたラジオから漏れるナレターの声のように聞こえた。
医師の言葉がまったく耳に入ってこなかった。
ただ虚に下を見つめていた。
まるで壊れた人形のようだ…。
不意に下を見つめていた顔が上がった。
おぼつかない足でゆっくり立ち上がり、そしてふらふらと治療室の中へ入っていった。
治療室内はやけに静かだった。
物音ひとつしない…
医師や看護婦が一つのベッドを囲んでいた。
私はそのベッドに吸い寄せられるように、ゆっくりと歩いていった。