運命
「ハクション」


「大丈夫?月」


先ほどまで墓石を見ていた光だったが、月のくしゃみにより視線が月に移された。



「だっ大丈夫」
カタカタ
そういうが寒さのあまり身体が震えている。

もう季節は秋に近い、日が沈むと肌寒くなる季節だ。


「はぁ〜
身体震えてるじゃないか」
バサッ

ふわっ

小刻みに震える身体が暖かくなった。
肩に軽い重みが加わった。




自分の肩を見てみると黒いブレザーがかかっていた。
ブレザーからだろうか?
ほんのりとシトラスの香が漂ってきた。


「わっ私は大丈夫だから」
少し慌てながら、
バサッと慌ててブレザーを脱ぐ。


「はい」

両手でしっかりとブレザーを持ち光に差し出す。


「寒いんだろ?
着てろよ。風邪引いたら困るだろ?」


しかしブレザーを受け取らず、墓石にまた視線を戻しジーッと墓石を見つめている。


「はぁ〜、それはこっちの台詞だよ。
私が風邪引くんじゃなくてこのままじゃ光が風邪引くでしょ?」

深いため息をつきながらいまだに墓石を見つめている光に言葉をなげかける。
月が心配するのは無理もない光は薄いワイシャツ一枚しか着ていない。


「俺は大丈夫だから…」

話を聞いているのだろうか?

大丈夫だからと一点張りで墓石から視線をずらさない。


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