運命
(まったく、しょうがないんだから)

月が腕時計を確認するとすでに長い針が2周していることに気づく。

周りもだいぶ薄暗くなってきている。

「そろそろ帰らない?
もう2時間もいるよ」



「あぁそうだな、」


返ってくる返事には感情が込められていない


「聞いてる?」


「聞いてるよ。」

返事が返ってくるから話は聞いているのであろう。

「じゃあ帰ろうよ」


月は光に帰ろうと促すが……



「悪いけど…

もう少し此処にいさせてくれ。」


帰ろうとしない。


はぁ〜と本日二回目の溜息を漏らす。


「分かった、私は先に帰るけどあと1時間だけだからね!
1時間しても家に帰ってきてなかったら迎えにくるから。」


結局は月が折れた。


「ごめんな月。」

申し訳なさそうに謝る光に月は…


「別になんにも悪いことしてないんだから謝るな!!」

わしゃわしゃと頭をなでた。


「そ・れ・と・もう私は大丈夫だから」


パサッ

ブレザーを光にかけ


「じゃあね!」


手を振りながら月は帰る為に足の向きを変えた。

ピタッ

しばらく走って光がいる方向で止まる。



(兄さんが死んだのは別に光のせいじゃないのに)


遠くで墓石を眺める光を見つめ小さく心の中で呟いた。

タッタッタッ
そして再び足の向きを変え走っていった。
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