モノクロの音色よ鮮やかに響け
私はカップの中身がコーヒーか紅茶だと無理矢理思って、それをこぼしたと考えてみた。

「…5杯位、ありそうです」
川畑は、フッと自嘲するように笑った。
「1リットル弱か。ヘマをしたものだ」

私は悲しくなって、いつも散歩の時に握る川畑の、血まみれでひんやりと冷たい左手を取った。

「痛い」
「あっ…」
親指の腹の辺りが切れて、半分固まった血が傷口を塞いでいたのが、私が触ったのでまた傷口が開いてしまい、新たに血がポタッと滴った。
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