モノクロの音色よ鮮やかに響け
川畑は意識が朦朧として来たようで、救急隊員の問掛けにまともに答えられず、うわ言のように私を呼んだ。

「…本田く…ん…」
「ここに居ます」
担架に乗せられた川畑に毛布をかけながら声をかける。

川畑は、頷いて言った。
「家の鍵が…リビングの引き出しにある。財布と、テープレコーダーも。棚の左端のテープを…持って来てくれ」
あぁ、はいはい。

こんな時でも、川畑は川畑らしいな…と私は苦笑しながら、それらを持って、救急隊員に運ばれる川畑と一緒に家を出て鍵をかけ、救急車に乗り込んだ。

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