モノクロの音色よ鮮やかに響け
この日も、私は自分の持ってるクラシックCDをテープに録った物をお見舞いの品に持って、川畑のいる病院を訪ねた。
午前中に入浴介助の仕事を済ませたその足で、バスに乗って病院へ向かう。
今からならお昼ご飯に間に合うかもしれない。
病室をノックしようとして、部屋の中から川畑ではない男の人の声がするのに気付いて立ち止まった。
「指の怪我が大した事ないのが不幸中の幸いだな。弾いてるのか?」
低い声だ。
「…たまに。いつまで日本に?」
川畑の声。
「定期コンサートがあるからな。明日の便で帰らねばなるまい」
「やっぱりウィーンで一緒に暮らすか、住み込みのメイドさんを雇ったらいいのよ」
こちらは女の声。
川畑の父母が来てるのだ!
私は部屋に入るタイミングを逃し、ドアの横で聞き耳をたててしまった。
午前中に入浴介助の仕事を済ませたその足で、バスに乗って病院へ向かう。
今からならお昼ご飯に間に合うかもしれない。
病室をノックしようとして、部屋の中から川畑ではない男の人の声がするのに気付いて立ち止まった。
「指の怪我が大した事ないのが不幸中の幸いだな。弾いてるのか?」
低い声だ。
「…たまに。いつまで日本に?」
川畑の声。
「定期コンサートがあるからな。明日の便で帰らねばなるまい」
「やっぱりウィーンで一緒に暮らすか、住み込みのメイドさんを雇ったらいいのよ」
こちらは女の声。
川畑の父母が来てるのだ!
私は部屋に入るタイミングを逃し、ドアの横で聞き耳をたててしまった。