モノクロの音色よ鮮やかに響け
「開いてる。入れ」
いつもの台詞。
「本田です。失礼します」
緊張を隠して、いつものように入る。

川畑は昼食を終え、ベッドの上半身を起こしたまま座っていた。

「今日はクラシックのテープを持って来たんです」
川畑のテープレコーダーにセットし、再生すると、音はCDやコンポに劣るが久しぶりに部屋に音楽が流れた。

「ショパンだな。川畑泰士演奏。お前のか?」
「そうです」
「さっき、本人が来ていた。お前が好きならサインでももらっておけば良かったな」

川畑は私が川畑の父の演奏が好きだと思ったらしく、そんな事を言って少し笑った。
「時間があれば弾いてもらえたかもしれないが…明日には帰るようだ」
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