モノクロの音色よ鮮やかに響け
私の話に、川畑は頷いた。
「それがお前の望みなら、煮え湯も飲める。やってみよう」

…どういう意味だろう。
私は戸惑ったけど、この時は意味がわからないままだった。

「ただし問題がある」
川畑は続けた。
「指揮が見えない」
あぁ、そうか…。

私は自分の都合に捕われて、また川畑への配慮が足りなかった事に落胆した。

「お前が隣で指揮を見て伝えてくれ。
お前が良ければだが。
学校側にもそれで良ければと」
川畑の言葉は、行く手を遮る闇を照らす、光のようだった。

「はいっ!」
嬉しくて嬉しくて、川畑に抱きつきたい位だった。
そんな衝動と戦ってる私の思いを知ってか知らずにか、川畑はフフッと笑って、音の世界へと入って行ったようだった。
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