モノクロの音色よ鮮やかに響け
川畑は、私の腕をやんわりと掴んで外した。

またはぐらかされるのかな…と悲しく思った時
「俺も好きだよ」
川畑の声は優しくて、苦笑気味に笑っていた。

川畑は私の手をとったまま、ピアノを背側に座り直して、私と向かい合った。

「見えなくても、耳を澄ませばわかる事がある。
お前は、もう少し耳を澄ましてみたらいい」
私はこれが実際の目と耳の話でなく、目に見えない言葉を心の耳で聞く例えだと察した。

「はい…」
確かに川畑は、口に出さずとも、私の心の耳に届くように伝えてくれていた。
大事にされているのを、感じていた。

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