モノクロの音色よ鮮やかに響け
広いリビングには、ゆったりとしたL字のソファとテーブルがあり、テーブルを挟んだ本来テレビがあるような位置に、一目で旧式とわかる角ばったコンポが置かれていた。

コンポの棚と繋がってるラックには、CDと、今時珍しくなったカセットテープがズラリと並んでいて、その一枚一枚の背に点字のラベルが貼ってある。

テーブルの上にあるタイプライターのような物が、点字を打つ機械のようだ。
テーブルには電話器と、川畑の部屋にあったのと同じ、どこか変わった形の置き時計もあった。

セミダブルのベッドが2つ入っていてもまだ広い川畑の両親の部屋は、ゲストルームと似た匂いがして、長い不在を感じさせた。

キッチン、バス、トイレ、洗面所、物干し場のある中庭に続くサンルームと、足早に一通り案内されてリビングへ戻った。
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