モノクロの音色よ鮮やかに響け
緊張しながらも懐かしくそんな事を思っている今、昔と違うのは、合唱する側でなく、ピアノの前に川畑と居るって事だ。

聴いた曲をすぐに弾ける川畑は、二学期が始まるとすぐ、あちこちのクラスで引っ張りダコで忙しかった。
今日の発表会も、ピアノから離れる時の方が少ないほど、伴奏を担当していた。

「流石に疲れるな」
担当外のクラスの合唱の間、ステージの袖で指を動かしながら、川畑は苦笑して言った。

襟つきの黒いシャツの上に、新しい白いジャケットを着た川畑は、それだけで惚れ惚れするほど格好良かった。

今日はサングラスをしていないし、目を瞑ったまま完璧に弾く川畑は、見に来た人達から注目の的だろう。
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