モノクロの音色よ鮮やかに響け
会場のどこかに、お父さんもお母さんと一緒に見に来ているはずだけど、私は視線が怖くてまともに観客席を見れず、指揮に集中するようにしていた。

「お前も疲れただろう?」
「まだ、大丈夫です」
疲れるより緊張していた。
きっと、後からどっと疲れが押し寄せそうだ。

「今日は調子がいいんだな。お前が集中していると俺もやりやすい」
川畑は微笑んだ。
もうすぐ、また出番だ。

「次、弟のクラスです。お父さんとお母さんも、聴きに来るって言ってました」
「そうか…」
川畑は笑みを引っ込めて頷いた。

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