モノクロの音色よ鮮やかに響け
「ご両親は、どこに?」
やまない拍手の中、立ち上がった川畑が耳元で聞いて来た。

「右側の、手前の方に」
前の方にいる位だから早く来たのだろうに、ステージ端のピアノの正面辺りに席を取っていた。

川畑は、私のお父さんお母さんに向けて、深々と頭を下げた。
それが会場に向けてではなく、個人にだという事に気付いたのは、きっと私とお父さん位だと思う。

お父さんは、私と目が合った時と同じように、軽く手を上げた。
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