モノクロの音色よ鮮やかに響け
川畑を待っていたのは、生徒ばかりではなかった。
広く開放されてる発表会には、音楽に興味のある一般の人や、合唱コンクール関係の人も来ている。

私の事を川畑のマネージャーか何かだと勘違いした人が、川畑の代わりにと丁寧に名刺を渡して来た。
地域のオーケストラ団の団長さんだった。
入らないかと熱心に勧められる。

それに、川畑に直接交渉して見事に玉砕していたのは、どうやら川畑泰士のファンらしく、父目的で川畑に近付いたのが見え見えだった。

私達がなかなか前に進めず困っていると、
「川畑くん」
皆の注意を引き付ける咳払いの後、威厳のある声が後ろから響いた。
「こちらへ」
教頭の服部先生だった。
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