モノクロの音色よ鮮やかに響け
川畑は時刻を聞くと軽く頷いて、
「今日はゴミ捨てはいい。洗濯からやってくれ」
そう言うと膝の上で手を組んで指を踊らせ、音の世界へと入って行った。

さっきは急かしているのかと感じたけれど、川畑が指でリズムを刻むのは、どうやら癖のようだった。
「わかりました」
私はそっと言ってメモをしまい、かわりにエプロンを出した。

真新しい白いエプロンの胸元には、水色の刺繍で小さく
『大滝家政婦ヘルパーセンター』の文字。

エプロンの紐を腰の後ろでキュッと結ぶと、気持ちも家事モードになりやる気が出る。

頑張るぞー!と心の中で掛け声高らかに、洗面所へ向かった。
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