モノクロの音色よ鮮やかに響け
お母さんと夕飯の支度をしてると
「ただいま」
知也が帰って来た。
「おかえりー」
「おかえり」
お母さんと私がほぼ同時に答える。

「揚げ物の匂い!腹減ったー。今日何?」
制服のまま、知也が台所を覗く。
「トンカツだよ」
「やった!」
私はこの、歳の離れた弟が大好きだ。
一人っ子の期間が長かったから余計に、兄弟が出来た喜びが大きかった。

「コラ、つまみ食いしないの。もうすぐお父さんも帰る時間だから。知也、お風呂沸かしておいて」
「はぁい」
お母さんは、揚げたてのカツをつまもうとした知也の手をピシャッと叩いて、遠慮なく手伝いを頼んだ。
唇を尖らせながら返事した知也に、私が笑う。

「ただいま」
そこへお父さんが帰って、皆で食卓を囲んで夕飯となった。

私は普段は意識しない極平凡な幸せを、夕飯と一緒に噛み締めた。
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