モノクロの音色よ鮮やかに響け
私はお父さんとはあまり話さないけれど、お父さんとお母さんは仲良しで、お母さんに話した事がお父さんに筒抜けになるのは承知していた。

間接的にだけど、お父さんも私の事を知っていてくれると思うと、理解されてる安心感があった。

「恭子」
ある日の夜、珍しく仕事から遅く帰ったお父さんに呼ばれた。
「…なに?」
何だかお父さんは、目を輝かせている。

「これ、どうかな?」
仕事着もそのまま、カバンから出して見せたのは、県内では割と有名な、定時制と通信制が選べる高校の資料だった。

「お父さんの上司の子供さんが行ってて、今年卒業だそうだ」
「…そうなんだ」
お父さんの口から、興奮とお酒の匂いを感じて、私は密かに眉をしかめながら、パラパラと資料をめくった。
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