モノクロの音色よ鮮やかに響け
黙っている間でも、いつも音がある空間は心地好かった。
私はだんだんと川畑が見えない事に慣れ、
それを良い事に、静かに曲を聴く川畑の様子をそっと見つめて、サングラスの下の素顔が見たいな…なんて思ったりした。

川畑は、音声録音も出来る小型のカセットプレイヤーでラジオを聞いてる事もあった。

音だけの世界で、色んな考え事をしているらしい川畑は、突然思い付いた様子でどこかへ電話をかけたり、電話を切った後でテープに何か吹き込んだりしていた。
きっと出前も、この調子で急に思い付いたのだろう。

リビングにCDと共に大量にあるテープは、川畑がメモや日記の代わりに声で記録をしている物だった。
ここまでするのは、生活の工夫というより、川畑のプライドや完璧に整理して記録しておきたい性格の問題なんじゃないかと私は思った。
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