モノクロの音色よ鮮やかに響け
川畑はしきりと舌打ちを繰り返しながら、自分で靴を履き、玄関の傘たてに置かれた白杖を取った。

川畑は右利きだ。
私は杖の邪魔にならないよう、左側に立って、玄関の扉を開けた。

途端に溢れた眩しい光。
ここからが、私の活躍所だ。

「わぁ、眩しい。陽の光に溢れてます」
「暖かい」
川畑は一言、淡々と言って、舌打ちを繰り返しながら外に踏み出した。

「庭を一周しましょう」
川畑は頷いた。
玄関の段差を難なく降りて、外の門へと続く石の道を、杖を左右に振りながら歩く。

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