モノクロの音色よ鮮やかに響け
川畑は、ピクッと片眉を上げると、私を上から下まで舐めるように見ながら、チッ、チッ、チッ、チッと舌打ちを4回もした。
そして、
「どちら様?」
いぶかし気に聞いて来た。

私は、なんて奴!と思いながらも、
「…初めまして。
大滝家政婦ヘルパー派遣センターから来ました、本田恭子です。
宜しくお願いします」
自己紹介の言葉と同時に頭を下げた。
すると、下げた頭の上から、チッ、とまた舌打ちの音がし、私はムッとしながら顔を上げた。

見ると川畑は、口の端を少し上げて、何故か笑っているようだった。
「俺は川畑聖士。お前は若そうだな。いくつだ?」
「21です」
私は、不快感が言葉に出ないよう努めて、
「ヘルパーの資格取り立てなんですけど、頑張るので、色々教えて下さい」
思わずまた頭を下げた。
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