モノクロの音色よ鮮やかに響け
川畑は、いつものソファにいなかった。

てっきりいつものCDだと思っていた曲は、川畑がピアノに向かって演奏していたのだ。

集中している川畑は、私が入って来た事に気付いてないようだ。

私は突然出会った生演奏に興奮し、曲が終わるまで息をつめてドキドキしながら川畑を見つめていた。

楽譜などないのに、長い指が、信じられないような早さで流れるように動く度に、ポロポロと音が溢れ出す。

こんな近くで生演奏を聴けるなんて、なんて幸運だろう。
ピアノの音が、繰り出される曲が、川畑が、美しかった。

本当に凄いピアニストなんだなぁとジワジワと感心して、涙が出そうなくらい感動した。
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