モノクロの音色よ鮮やかに響け
「川畑さん」
演奏が終わって声をかけると、川畑はビクッとした。

「…いたのか」
「さっき、帰って来ました。
川畑さん、気付かなかったようなので…
演奏、凄いですね。
いつものCDかと思いま…」

私が感動を伝えようと話してる途中で、
突然川畑は、ガンッ、と拳をピアノの鍵盤に叩きつけたので、今度は私がビクッとした。
不協和音の余韻が響く。

川畑の様子がおかしい。

サングラスの上からでも感じ取れるような、苛立ち、怒り…
端正な眉を寄せて唇を噛む様子は、悲壮感まで漂わせていた。

私が聞いてたから?
何か悪い事を言っただろうか?
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