モノクロの音色よ鮮やかに響け
「それで、どうして川畑さんを怒らせてしまったの?」
「理由が、よくわからなくて…」

私はすっかり畏縮しながら、事の経緯を話した。
大滝さんは、ゆっくりと何度も大きく頷きながら聞いていた。

私は大滝さんが話の聞き役に慣れているのを感じ、頼もしさを覚えた。
きっと介護プランを立てる時にお年寄りの話を聞く時も、こんな感じなのだろうな…見習いたい。

「音楽家としての誇りかしらね…」
聞き終えた大滝さんが小さく口を開く。
「何年か前に、川畑聖士さんが、友人の結婚式に呼ばれてピアノ演奏した事を知ってる?」
「はい、インターネットで調べて…」
演奏は素晴らしかったと、書かれていた記憶がある。
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