モノクロの音色よ鮮やかに響け
5分位たって、もう一度チャイムを押す。
…やっぱり出ない。

私は思い切って門のノブを掴んだ。
いつもと変わらず開いていた門から、いつもと違った緊張をしながら、川畑邸へと進む。

川畑は玄関のチャイムにも出なかった。
留守…って事はないだろう。

もし用事で居ないなら、川畑はセンターに連絡を入れるだろうし、門も閉まっているだろう。

私は妙な胸騒ぎを覚えながら、玄関のドアノブを回した。
鍵はかかっていなかった。

「川畑さん?」
家の中は静まりかえっていて、私のビクビクした声が、やけに大きく響いた。

玄関には、いつも履いている川畑の靴がある。
「川畑さん?本田です。上がりますよ…?」

動悸が激しい。
私は川畑を探して、まずリビングに入った。
…いない。

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