モノクロの音色よ鮮やかに響け
「今は、いつだ?」
川畑は、けだる気に半分乾いた血のついた右手を上げて、サングラスのない少し窪んだ目を隠すように覆った。

「8時半ちょっと過ぎだと思います。それより…救急車呼ばなきゃ」
川畑は少し間をあけて、頷いた。

「火曜の、朝か。昨日の昼から、記憶がない」
「そんな…」

なんて事だ。
川畑は一人ここで、まだ寒い夜を明かしたのだ。体も冷え切っている訳だ。

「もう少しだけ、待ってて下さいね」
私は慌ててリビングに入ってから、コードレス電話の方がいいと思って階段を駆け上がり、川畑の部屋から子機を掴んで、119番に電話をかけながらキッチンに戻った。
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