モノクロの音色よ鮮やかに響け
『はい、火事ですか?救急ですか?』
落ち着いた男の人の声がすぐに出た。

「救急です。あの、血が、たくさん出て…早く、早く来て下さい!」
慌てれば慌てるほど、うまく説明なんて出来ない。
『はい、住所と電話番号とお名前お願いします』
応対の声は、早口ながらも落ち着いて聞いて来た。

「私は本田で…ヘルパーで、怪我してるのは川畑聖士さんです。住所は…」
私は、ぐったりと横たわる川畑を見つめながら、鞄からガサガサとメモ帳を取り出して答えた。

「10分で、来るそうです」
電話を切って川畑に言うと、
「どれ位、出血してる?」
小さく唇だけ動かして、聞いて来た。

「どれ位って…」
なんて表したら良いのだろう。
「ティーカップ何杯分だ?」
それならイメージしやすい。
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