君だけは離さない
「それは出来ない。俺は何年も何年も気が遠くなるくらい美桜を探し続けて、漸く出会えたんだ。今更離せるか!美桜の事は何があっても譲らない!絶対にな!」
「坊ちゃん……菊は悲しゅうございます……」
「とにかく美桜の事は頼んだ。菊、余計な事はするなよ。いいな」
「………………。」
響は隣の美桜の部屋へ入ると、まだ朝早い為か美桜はベッドでぐっすりと眠っていた。
目元にはクッキリと隈が浮かんでいて眉間にシワが寄って険しい表情で眠っていた。
響は愛おしそうに、そっと美桜の頬を撫でた。
彼女が目の前にいて触れる事が出来る。あんなに空っぽだった心が満たされていくのを感じる。
「……う……ん……?」
「美桜」
「…………え?」
「悪い、起こしてしまったな……」
申し訳なさ気に謝る響が自分の頬に触れているのに気が付くと無意識のうちに彼の手を払ってしまった。
「………いや……いや、やめて………」