訳有彼氏

 「…わたし…さいていじゃん。」

 言葉にすると苦しくて、涙が一筋頬をぬらした。

 都合が悪くなったら泣くなんて、私は小学生かと突っ込んでおく。

 「…ゆうちゃん。里美(りみ)だけど、入ってもいいかなぁ?」

 ひし形クッションに顔を埋めていれば、扉がノックされた。

 顔をごしごしやり、いいですよーと穏やかな声を出す。

 ガチャリと開いた扉と同時に、寝転がっていた体を正し、ベッドの上に座る。

 入ってきたのは鴉孤の母親で直人さんの姪っ子にあたる望月 里美(もちづき りみ)さんだ。

 幼い顔をした里美さんは、顔に似合う舌ったらずな喋り方をする人だ。

 
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