訳有彼氏

 微かに残った理性が、今日は誘と帰れる特別な日だと騒ぐ。

 それでも、恐怖には勝てない。

 鴉孤は知らないのだ。

 この恐怖に打ち勝つ方法を。

 知らないから苦しむ。

 知らないから、溺れてしまう。

 ジワリジワリと穢れていく心に身を置きながら、鴉孤は己を切り刻みたい衝動を抑えきれなくなった。

 学校のトイレにかけこみ、刃を腕に突き刺す。

 早く、早く。

 押さえつけた分、血が滲み、左腕がキャンバスへと成り代わる。

 消えたい思いは願望へ変わり、それを満たしていく。

 もぉ、こうなっては自分ではいられない。

 心が対処できなくなる。

 鴉孤は静かに目を閉じた。

 
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