訳有彼氏

 そう言われては反論できない私は、静かに空の横に座った。

 続々と人がリビングに集まってくる。

 我が家の決まりで、食事中はテレビをつけない。

 だから無言で準備が行われる。

 私と空は座ったまま待機。

 「鴉孤君。病院どうだったの?」

 直人さんは鴉孤の叔父に当たる人だ。

 「ああ。別に、俺は普通。」

 一瞬理解できないと言う顔をした直人さんは、鴉孤の顔を見た。

 鴉孤が多重人格になったのは最近の話じゃないのに。直人さんはいつも誰なのか予測もせずに鴉孤に話しかける。

 そういう無神経なところが、キライだけどお姉の夫で私の義兄だから言わないし、言えない。

 私がムスっとしているのがわかったお姉は、不愉快そうにため息を吐いた。


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